少しも大人になんかなれないのに

もう甘えてばかりは いられない現実の中で

ナナは とびきり甘い夢を見せてくれた



とても幸福な初恋みたいだったよ




ねえ ナナ

ナナは今でも自分の故郷が

どこにもないと思ってる?


あの窓辺の食卓も椅子も


あの頃のまま



あの場所にあるよ




もしもナナが男だったら

一世一代の恋が出来るのに


あの頃あたしは よくそう思ってた



だけど そしたらこんな
楽しい思い出ばかりには


きっと ならなかったよね



恋に痛みは つきものだから


溺れてゆく程

苦しいものだから




あの夜


もしもナナが一緒にいてくれなかったら



あたしは身投げして多摩川の底に沈んでたと思う




本気でそう思う




ああああああ