ねえ ナナ

あたし達の出会いを覚えてる?


あたしは運命とか

かなり信じちゃうタチだから


これはやっぱり運命だと思う


笑ってもいいよ




---- あたし達の出会いを覚えてる? ----


外はいつの間にか吹雪で

電車は走ったり止まったり


結局東京まで5時間もかかってしまったけど

あたしは少しも退屈しなかった

だけどあたしは自分のことばかりしゃべって

ナナの話は少しも聞いてあげられなかったね


もっともナナのことだから

聞いてもはぐらかしていたとは思うけど




ねえ ナナ


あの川べりで肩を並べて

水面を彩る光を見たよね


あの頃 口ずさんでいたメロディーを


もう一度 聴かせてよ




その時 何故か

あたしは少し 泣きそうになったんだ

それがどうしてかは 上手く言えないけど


差し出されたナナの手は
意外なほど 温かくて


胸まで熱くなったんだよ




だけど ナナと暮らし始めることに

不思議と不安はなかったんだよ


それがどうしてかは

やっぱり上手く言えないけど




ヴィヴィアン

ピストルズ

セブンスター


ミルクを入れたコーヒー
イチゴの乗ったケーキ


そして蓮の花


ナナの好きな物は ずっと変わらなくて


移り気なあたしには それが
とてもかっこいい事のように思えたんだ




ねえ ナナ


ナナは気ままな ノラ猫みたいで

誇り高く 自由だけれど


癒えない傷を負ってたよね



能天気なあたしは

それさえ かっこいい事のように思ってた


それが どれほどの痛みなのかも知らずに




まだ歌詞の付いていなかった
あの曲に


ナナがデタラメの英語を
乗せて歌うから


まるで不思議な呪文でも
掛けられてゆくように


あたしは その声の虜になったんだよ



食卓がステージに

携帯がマイクに

三日月がスポットライトになる


あんな魔法を使えるのは


この世にナナしかいない


あたしは今でも そう信じてる




ああああああ