NANA COMICS #6
   コミックス6巻 2002年9月18日 第1刷発行
* 第17話 *
奈々は試食販売の仕事を短期バイトで始めていた。意外にも楽しい様子。ブラストのみんなで七夕の飾り付けをする。トラネスのツアーが最終日を迎え、本当にタクミが会いに来るのか不安でしかたのない奈々。打ち上げの場でシンとレイラが初対面。 「奈々とやった」というタクミの暴言に周りのメンバー呆然。険悪ムードになるが、その後タクミは奈々に会いに行くのだった。

* 第18話 *
タクミと奈々のことを知ったノブは困惑し、シンは奈々を心配する。何も聞かされていなかったナナはひたすら戸惑い、ファミレスにヤスを呼ぶ。 そんなみんなをよそに当の二人はラブラブ。でもまだどこか微妙な関係。ナナはレンの部屋へ行く。「一緒に住む?」と言われ、「考えとくよ」と答えるナナ・・・。ノブが奈々を訪ね、告白しようとするが今はダメだと帰って行く。奈々も彼の思いに気付いたようだ。 お金で女と寝るシンが、レイラから札束を渡される。

* 第19話 *
ブラストにレコード会社からスカウトの話が来る。その会話から始まり、奈々はナナにタクミとのことを話し、ノブのことも相談する。「あんたはタクミが好きなんだからしょーがねえじゃん」と言われ、自分に問い掛ける奈々。 ノブはシンと話をし、ちゃんと告白することを決意。シンは「わざと忘れた」ライターを取りにレイラの部屋へ。川原でノブに告白される奈々。嬉しいと感じ、タクミとノブの間で揺れ動く。2週間オフのレンの部屋へナナが出かける。

* 第20話 *
それぞれのオフを過ごすレン・ナオキ・タクミ・レイラ。タクミからの連絡は奈々にはない。毎日練習で顔を合わすノブにほとんど心は動いていた。 ナナがレンの部屋にいるので一人暮しがとにかく寂しかった。このまま連絡がなければ諦められる、そう思っていた時に突然タクミが現れる。 その場に居合せたノブはひたすら苦悩する。断ち切ろうと思っていてもそれができなくて流される奈々。ノブにも気まずくて会えないでいた。夏休みで美里が上京。


感想
タクミは本当に奈々に会いに来るのだろうか?!と思ってたら来ちゃったね、これ。私はてっきりよくあるパターンの「やり逃げ」タイプかと思ってたよ。 それで終わらないのがこのマンガのすごいところかもしれない。
売れっ子ミュージシャンで、ただのファンの女の子を軽く遊んだだけ、と思ってたんだけど、意外にも(?) 奈々のことは気に入ったみたいね。奈々は奈々でこれまた「夢」(=タクミ)と「現実」(=ノブ)の間で大変なんだけども。 これがきっかけとなって徐々にナナとの間に溝ができてしまうのねえ・・・(泣)。それぞれの思いがすごく切実で現実的で共感できる。

そうそう、そう言えば5巻のラストから、「モノローグ」っていうのかな、各話ごとの「語り」、これにすごく「時間差」ができたよね?!?! 今までは話の流れと同じような感覚で語っていたのに、急にそれがかなり未来から過去を振り返ってる、そんな感じになったのよ。 これがまたすんごい気になるよね〜!!19話の終わりでは「今でもあのテーブル越しにナナの姿を願わない日はない。心で名前を呼びかけたりする。何度も何度でも」 って、ってことはよ?!「今」は奈々のそばにナナはいないんだよ。5巻の16話の終わりでは「だからお願い、もう一度歌って」だもんなあ。 むむむ・・・気になる・・・!!


「勝手に」 奈々の心理分析
前巻同様、まだまだ揺れ動く奈々の想い。
テレビの向こうにいる人が、本当に自分に会いにきてくれるのだろうか?? まさかそんなことが、でも来てくれたらめちゃめちゃ嬉しい、誰でもそう思うと思うなあ。確かに今時花占いなんてやらないけど(笑)、たくさんごちそう作ってるところなんか すごい可愛いと思う。ナナにも話してないし、このまま来なければ、奈々の中でも終わっていたことだと思う。けど来たんだよねーー!夜中の3時。諦めていた頃だったかもね。 そりゃあ嬉しいだろう。
ナナに話したくて待ってるけど帰ってこない。そしたらノブがやってきて、「タクミを越えてやる」と意味深なセリフ。やっとナナに話すことができ、 ナナもいろいろ励ましの言葉をくれて一安心。ノブのことを相談するが、「あんたはタクミが好きなんだからしょーがねえじゃん」と言われるが、ほんとにそうなのか自分でもわからない。第一、 タクミはやっぱり「トラネスのタクミ」であって、切り離しては考えられない。

ノブの誠実な告白は心から嬉しかった。タクミの言葉は本気かどうかすら信用できない。 今まで通り、ただのタクミのファンのままだったら、ノブの彼女になってたであろう奈々。ずっと手の届かない人だったのに、関係を持ってしまったことで 戸惑い整理のできない想い。でも、タクミの言葉を信用できる気持ちがあれば心は動かないと思うんだけど、そこが今一つなんだなあ。タクミもまだそこまで安心させてあげてないし。 奈々も「タクミに愛される」という自信がないんだよね。

細かいこといろいろ考えてるけど、要するにずっとファンで憧れていた、遠い存在だった人、タクミは「夢」で、目の前にいて嬉しい言葉をかけてくれるノブは「現実」 で、そのどちらをとるか、どちらかを切り捨てるのか、そんなことができるのか、と自問自答を繰り返してるわけですな。
でもねえ、2度目の関係の時、「仕事最優先でつい女ほったらかしにしちゃうし、メールの返事とかマメに書けないし、だから一人として続かないんだよね」ってタクミ言ってるやん? 奈々も「そんなの忙しい仕事なんだからしょうがないのに」と言ってるのですが、いざ自分がその立場になるとそうは思えないのかしら?

けど3度目の関係、この時はっきり言ってるね。「本当はトラネスのタクミに興味本位で近づきたかっただけの女で」と。 何もなく、カラッポな自分。そんな自分をタクミは知ってる。「タクミだけがこんなあたしを許してくれる唯一の共犯者みたいだ」って、ここんとこよくわからないなあ・・・ 「唯一の共犯者」ってとこがひっかかる。ナナが思ってるような人間ではなく、ノブが思ってるような人間でもない。でもアンタも相当どうしようもない男だよ。私たち、似たもの同士かもね。。。 ってとこですかね?
それは「愛」とはまた違うのでしょうか??それともそこから始まる愛なんでしょうか??


「勝手に」 ナナの心理
奈々から何も聞かされていなかったナナが、いきなり奈々とタクミの抱擁場面に遭遇。 ファミレスにヤスを呼び出して話す内容はナナの所有欲を物語っている。奈々とずっと一緒にいたかったんだろうなあ。 「誰かを自分のものにするなんて・・・」ってのはすごくよくわかる。人は誰のものでもないからね。だけども奈々が遠くに行ってしまいそうで不安だったんじゃないかな。 ヤスからレンが上京する前に言ってた言葉を聞いたナナ。二人は同じことを考えてたんだね。それだけに「一緒に住む?」とレンに言われ、「考えとくよ」と言ったのは、もう一度、 お互い寄り添ってひとつになれたらいいなと思ってたのかもしれない。

高校時代から一緒だったノブが奈々に惚れた。ノブがいいヤツなのはよく知っている。奈々に告白した日の夜、バスタブで歌ったのはやっぱりノブを応援したかったんだろう。この時点では私はそう解釈していた。


「勝手に」 タクミの心理
この男はまるで何を考えてるのかわからんなあ、と思って始めてみた、「タクミの心理」。
5巻、14話の麻雀大会で奈々と初対面し、翌日電話をかける。「また会えるといいなと思ってた。じゃなきゃわざわざ電話なんかしない。おれそんなマメじゃないし」 ほんとにそう思ってたのかなあ。いやしかし、このセリフの前に、「昨日はごちそうになったのに挨拶なしで帰っちゃってごめんね。ちゃんとお礼言わなきゃと思って」って、これまた律儀なお言葉。結構いいヤツかもしれない。 関係持ったのはなりゆきかもしれないけど、その後に携帯番号とメールアドレスを書き残す、これってやっぱり「これっきり」にするつもりはなかったってことよね。だったらそんなもん残さないだろうし。

でもなあ、ツアー最終日の打ち上げ、あの場で「今さらサインなんかいらねえだろ。次の日やったし」とか言っちゃうし、奈々の立場を考えてないよねえ〜(汗) さらに「おかげで大事な用を思い出したよ」って、忘れてたんか!! でもちゃんと会いに行ったからびっくり。そして彼氏がいないと聞いて良かったといい、かわいいからもてるでしょとか、ちょっと気になってるっぽい。「しっかり働いていっぱい新曲出してくれないと」という奈々を「ほんとにかわいいね」と、ここは本気で思っただろうな。 でも、「誰にも渡したくない。ずっとおれのものでいてよ」ってそれは本気かどうかわからん。その言葉はこの状況ではあまりにも軽すぎるんだよな〜・・・。

2週間のオフの間、結局何してたのかはわからんし、海辺でたそがれてたのもちょっと寄っただけらしいしなあ。ただ一人になりたかっただけだったらいいんだけど。 携帯持ってなかったからって奈々の家の前で1時間も待つなんて、なかなか健気なとこあるのね。ノブが送ってくれて、という奈々の言葉に「それはわざわざどーも」と完全に彼女扱いやん。
タクミはノブの奈々に対する気持ちに気付いてたのかな?少なくともあの打ち上げの時に多少は気付いてるよなあ。けど自信満々という感じのところがすごい。

ほとんど連絡しなかったのに、奈々は何の文句も言うわけでもない(ただ奈々はこの時ノブのことを考えてたんだけど)。ちょっと心配そう(不安そう?)な眼差しで後姿を見つめるタクミ。そのあとすぐに「お腹すいてる?何かつくろうか」と 自分を気遣ってくれ、とても優しい表情に変わる。しかし、奈々が何を考え、ノブとどんなことになってるのかとか何も知らないタクミ。そんなんでいいのかあーー!! だってまだほんとに「会ったらヤルだけ」って感じやもんなあ〜・・・